てのりぐま(bamboo)日記

サイエンスとテクノロジーをこよなく愛する。

退職時に秘密保持誓約書にハンコを押さない場合の退職金等の不利益な扱いをすることは違法。

そういえば退職する際に秘密保持誓約書にハンコを押してもらう、と言われたことがあった。
大した内容でなかった(基本しゃべるな)のと、制限の期間が2年ぐらいだったのでまあいいかなと思って当時ハンコを押した。
そもそもこういう行為が社会通念上妥当なのかどうか。ググってみた。

そもそもこのような行為は不正競争防止法上どうなっているのか。
判例を探してみると、
在職中と退職後の秘密保持義務-有効性とその効果-
さんから引用
===ここから
阪高判平6.12.26判時1553号133頁[ポリオレフィン発泡体事件]

「従業員ないし取締役は、労働契約上の付随義務ないし取締役の善管注意義務、忠実義務に基づき、業務上知り得た会社の機密につき、これをみだりに漏洩してはならない義務があることはいうまでもないし、また、…控訴人は、その就業規則中で、従業員に対し、その業務上知り得た機密の漏洩を禁止し(就業規則四条)、これに違反して業務上の秘密を洩らし会社に損害を及ぼしたときは懲戒解雇とする旨を規定(同七四条三号)しているところでもあるが、控訴人には、その知り得た会社の営業秘密について、退職、退任後にわたっての秘密保持や退職、退任後の競業の制限等を定めた規則はないし、従業員ないし取締役が退職、退任する際に、それらの義務を課す特約を交わすようなこともしていない。」
 「しかし、そのような定めや特約がない場合であっても、退職、退任による契約関係の終了とともに、営業秘密保持の義務もまったくなくなるとするのは相当でなく、退職、退任による契約関係の終了後も、信義則上、一定の範囲ではその在職中に知り得た会社の営業秘密をみだりに漏洩してはならない義務をなお引き続き負うものと解するのが相当であるし、従業員ないし取締役であった者が、これに違反し、不当な対価を取得しあるいは会社に損害を与える目的から競業会社にその営業秘密を開示する等、許される自由競争の限度を超えた不正行為を行うようなときには、その行為は違法性を帯び、不法行為責任を生じさせるものというべきである。」
 以上のように判断し、使用者が輸出する機会を奪われたことによる逸失利益(5280万円)の損害賠償請求を認めました。

===ここまで
となっていて、まあ営業秘密については就業規則に定めていれば、退職時に秘密保持義務を課す文書に押印するのは普通にありだし、こっちが押してなくても会社側が守られているんでしょうね。

ただし、絶対に押さないといけないか、というとそうではなくってあくまでも同意が必要。

秘密保持誓約書のサインは拒否できる?退職時の注意点を徹底解説
弁護士法人S&Nパートナーズ法律会計事務所
さんから引用
====ここから
社員は秘密保持誓約書の作成を拒否できる

会社は、社員に対して、秘密保持誓約書を書くことを強制できません。
社員は、秘密保持誓約書を書くかどうか自由に決めることができるので、あくまで社員が誓約書を書くことに同意した場合しか秘密保持誓約書を作成できません。
秘密保持誓約書は、退職する際に情報を持ち出したり、転職後に情報漏洩したりしなければ、特段問題になるものではありません。
しかし、誓約書の内容として、同業他社への転職を長期にわたって禁止する、関与していない情報についても万が一漏洩した場合は責任を負わせるなど、著しく不合理な内容の書面が作成されている場合もあります。
このような場合は、秘密保持誓約書への署名を拒否して問題ありません。

期間や範囲、損害賠償額を慎重に確認

秘密保持誓約書への署名・押印を求められたときは、次のような点に注意して内容を確認しましょう。
秘密情報の範囲が広範囲すぎないか
競業避止の期間が不当に長すぎないか
損害賠償の金額に高額な違約金が付加されていないか
上記のように、著しく社員側に不利益な内容でないかを確認することが重要です。
あまりに会社側に有利な内容の場合は、誓約自体が無効と判断される可能性があります。
加えて、署名・押印しないと退職金を払わないといった対応も違法です。
退職金は退職金規定に従って支払われるもので、退職金を払わない理由が明記されていない限り、秘密保持誓約書に署名押印しないことを理由に、退職金の減額や不支給をすることはできません。


署名・押印の強要は違法

秘密保持誓約書への署名押印を求められた際、内容から拒否したのに強制されたような場合は、強迫(民法96条1項)に当たるとして、取り消すことができる場合があります。
このような場合は、まずは弁護士に相談してください。
====ここまで

なるほど。退職時の条件としていかにもそれをしないといけないように示されたことは違法の可能性が高かったんだね。
そもそも、文書の内容によっては無効になることもあるらしいけど、大した内容でなくてまあ社会通念上で許される内容であれば文書の効力は有効だということも示されている。
まあ、やめるんだったら、大した内容でなければさっさと文書に押印して、おさらばというのが精神的にダメージすくないでしょうね。
大した内容かどうかのチェックは本気でやる必要あるなあ。

勉強になりました。